Wronskian~その解たちは線形独立か?(後編)

後編では、Wronakianがあるx_0\in I0でないなら

Wronakianは区間Iにおいて恒等的に0であることを示していきます。

まず、次のようなn階線形微分方程式について考えます。

y^{(n)}+a_{n-1}(x)y^{(n-1)}+\cdots+a_0(x)y=0\cdots(1)

(1)の解y_1,y_2,\cdots,y_nが線形独立であるかどうかを調べるには

|W|=\left| \begin{array}{cccc} y_1&y_2&\cdots&y_n\\ y_1^{(1)}&y_2^{(1)}&\cdots&y_n^{(1)}\\ \vdots&\vdots&\vdots&\vdots\\ y_1^{(n-1)}&y_2^{(n-1)}&\cdots&y_n^{(n-1)} \end{array} \right|

というWronakianを考えればいいのでした。

天下り的ですが、次の定理を証明します。

<Wronskianの微分>
\frac{d}{dx}|W|=-a_{n-1}(x)|W|\cdots (2)

証明には前回の記事で導いた行列式の微分公式を使います。

実はここで使いたいがためにこの前の記事は書きました。

(証明)
行列式の微分公式から

\frac{d}{dx}|W| =\left| \begin{array}{cccc} y_1^{(1)}&y_2^{(1)}&\cdots&y_n^{(1)}\\ y_1^{(1)}&y_2^{(1)}&\cdots&y_n^{(1)}\\ \vdots&\vdots&\vdots&\vdots\\ y_1^{(n-1)}&y_2^{(n-1)}&\cdots&y_n^{(n-1)} \end{array} \right| + \left| \begin{array}{cccc} y_1&y_2&\cdots&y_n\\ y_1^{(3)}&y_2^{(3)}&\cdots&y_n^{(3)}\\ \vdots&\vdots&\vdots&\vdots\\ y_1^{(n-1)}&y_2^{(n-1)}&\cdots&y_n^{(n-1)} \end{array} \right| +\cdots + \left| \begin{array}{cccc} y_1&y_2&\cdots&y_n\\ y_1^{(1)}&y_2^{(1)}&\cdots&y_n^{(1)}\\ \vdots&\vdots&\vdots&\vdots\\ y_1^{(n)}&y_2^{(n)}&\cdots&y_n^{(n)} \end{array} \right|

平行なベクトルを含む行列式の値は0となるので

最後の項の

\left| \begin{array}{cccc} y_1&y_2&\cdots&y_n\\ y_1^{(1)}&y_2^{(1)}&\cdots&y_n^{(1)}\\ \vdots&\vdots&\vdots&\vdots\\ y_1^{(n)}&y_2^{(n)}&\cdots&y_n^{(n)} \end{array} \right|

だけが残ります。

つまり

\frac{d}{dx}|W| =\left| \begin{array}{cccc} y_1&y_2&\cdots&y_n\\ y_1^{(1)}&y_2^{(1)}&\cdots&y_n^{(1)}\\ \vdots&\vdots&\vdots&\vdots\\ y_1^{(n)}&y_2^{(n)}&\cdots&y_n^{(n)} \end{array} \right|

となります。

いま、y_1,y_2,\cdots,y_n(1)の解ですから、
\left| \begin{array}{cccc} y_1&y_2&\cdots&y_n\\ y_1^{(1)}&y_2^{(1)}&\cdots&y_n^{(1)}\\ \vdots&\vdots&\vdots&\vdots\\ y_1^{(n)}&y_2^{(n)}&\cdots&y_n^{(n)} \end{array} \right|\\ =\left| \begin{array}{cccc} y_1&y_2&\cdots&y_n\\ y_1^{(1)}&y_2^{(1)}&\cdots&y_n^{(1)}\\ \vdots&\vdots&\vdots&\vdots\\ \displaystyle\sum_{k=0}^{n-1}-a_ky_1^{(k)}&\displaystyle\sum_{k=0}^{n-1} -a_ky_2^{(k)}&\cdots&\displaystyle\sum_{k=0}^{n-1} -a_ky_n^{(k)} \end{array} \right|

i行をa_i(x)倍して第n行に加える

操作をi=1,2,\cdots,n-1について行えば

(与式)
=\left| \begin{array}{cccc} y_1&y_2&\cdots&y_n\\ y_1^{(1)}&y_2^{(1)}&\cdots&y_n^{(1)}\\ \vdots&\vdots&\vdots&\vdots\\ -a_{n-1}(x)y_1^{(n-1)}&a_{n-1}y_2^{(n-1)}&\cdots&a_{n-1}y_n^{(n)} \end{array} \right| =-a_{n-1}(x)|W|

(証明おわり)

(2)の両辺に\exp(\int_{x_0}^{x}{a_{n-1}(x)}dx)

をかけると、

\frac{d}{dx}\left(  \exp\left( \int_{x_0}^{x}a_{n-1}(x)dx \right)|W| \right)\\ =a_{n-1}(x)\exp\left( \int_{x_0}^{x}a_{n-1}(x)dx \right)|W|+\exp\left( \int_{x_0}^{x}a_{n-1}(x)dx \right) \left( \frac{d}{dx}|W| \right)\cdots (3)

であることから

(2)より、

\frac{d}{dx}\left(  \exp\left( \int_{x_0}^{x}a_{n-1}(x)dx \right)|W| \right)=0 \cdots(4)

が導けます。

(4)の両辺をxで積分して、

\left(  \exp\left( \int_{x_0}^{x}a_{n-1}(x)dx \right) |W| \right)=C\cdots (5)

となります。

積分定数Cx=x_0を代入することで求まり、

C=|W|_{x=x_0}\cdots (6)

(5),(6)より

|W|=|W|_{x=x_0} \exp\left( -\int_{x_0}^{x}a_{n-1}(x)dx \right) \cdots(7)

となります。

(7)の式の指数関数の部分は常に正なので、

\begin{cases} \forall x\in I, |W|=0&(\exists x_0\in I, |W|_{x=x_0}=0)\\ \forall x\in I ,|W|\neq0&(\exists x_0\in I, |W|_{x=x_0}\neq0) \end{cases}\cdots(8)

がいえます。

したがって|W|が区間I上で恒等的に0でないことをいうには、

区間上のある一つの値を代入したときの|W|を調べればよいことが示せました。

Wronskian~その解たちは線形独立か?(前篇)

解空間からとってきた解たちが線形独立かどうかをどうやって判定したらいいのでしょうか?

ここではWronskianという道具を紹介したいと思います!

線形微分方程式と解空間について

の記事で述べましたが、線形微分方程式の解空間は線形空間になっています。

よって解空間から”適当な数”の線形独立な解たちをとってくれば、解空間の任意の元

すなわち線形微分方程式の一般解をそれらの線形結合で表すことができます。

”適当な数”と書きましたが、これはその解空間の次元に等しく

「n次線形微分方程式において解空間の次元はちょうどn」です。

ここではこの定理は証明しません。認めたものとして使います。

(はいもちろん不精です。怠慢です。だってめんどくさそうだし)

さて本題です。n個の解が線形独立であるとは

そもそも次が成り立つことでした。

y_1,y_2,\cdots,y_n

があるとき

c_1y_1+c_2y_2+\cdots+c_ny_n=0\cdots (1)\\  \\    \to c_1=c_2=\cdots=c_n=0\cdots (2)\\
が成り立ちます。

未知数がc_1,c_2,\cdots,c_nで、n個あるので、式も(1)以外にn-1個必要です。

そこで(1)の両辺をxで微分していくと、(1)を含めて次のn組の式が得られます。

\begin{cases}  c_1y_1+c_2y_2+\cdots+c_ny_n=0\\  c_1y_1^{(1)}+c_2y_2^{(1)}+\cdots+c_ny_n^{(1)}=0\\  \vdots\\  c_1y_1^{(n-1)}+c_2y_2^{(n-1)}+\cdots+c_ny_n^{(n-1)}=0  \end{cases}  \cdots(3)

y_j^{(i)}y_jの第i次導関数を表すこととします。

(3)は行列を用いて次のように書き換えることができます。

\left(  \begin{array}{cccc}  y_1 &y_2&\cdots&y_n\\  y_1^{(1)}&y_2^{(1)}&\cdots&y_n^{(1)}\\  \vdots&\vdots&\ddots&\vdots\\  y_1^{(n-1)}&y_2^{(n-1)}&\cdots&y_n^{(n-1)}  \end{array}  \right)  \left(  \begin{array}{cccc}  c_1\\  c_2\\  \vdots\\  c_n  \end{array}  \right)  =  \left(  \begin{array}{cccc}  0\\  0\\  \vdots \\  0  \end{array}  \right)\cdots(4)    latex (4)&s=2$はc_1,c_2,\cdots,c_n

の連立方程式とみることができる。

このときc_1=c_2=\cdots=c_n=0となる必要十分条件は

W=\left(  \begin{array}{cccc}  y_1 &y_2&\cdots&y_n\\  y_1^{(1)}&y_2^{(1)}&\cdots&y_n^{(1)}\\  \vdots&\vdots&\ddots&\vdots\\  y_1^{(n-1)}&y_2^{(n-1)}&\cdots&y_n^{(n-1)}  \end{array}  \right)

が逆行列W^{-1}を持つこと、すなわち

\left|    \begin{array}{cccc}  y_1 &y_2&\cdots&y_n\\  y_1^{(1)}&y_2^{(1)}&\cdots&y_n^{(1)}\\  \vdots&\vdots&\ddots&\vdots\\  y_1^{(n-1)}&y_2^{(n-1)}&\cdots&y_n^{(n-1)}  \end{array}  \right|\neq 0\cdots (5)

が成り立つことです。

「Wronskian という道具」 

さて(5)で登場した

\left|  \begin{array}{cccc}  y_1 &y_2&\cdots&y_n\\  y_1^{(1)}&y_2^{(1)}&\cdots&y_n^{(1)}\\  \vdots&\vdots&\ddots&\vdots\\  y_1^{(n-1)}&y_2^{(n-1)}&\cdots&y_n^{(n-1)}  \end{array}  \right|

Wronskian(Wronskiの行列式)と呼びます。

Wronskianが0にならないことが解y_1,y_2,\cdots,y_nが線形独立であるための

必要十分条件となるのです!

しかしながらここで注意しなければならないのはy_1,y_2,\cdots,y_nがある区間I上で

定義されたxの関数だということです。

すなわち、y_1,y_2,\cdots,y_nが線形独立であることをいうためには区間I上のすべての

xについてWronskianが0になることをいわないといけません。

ただ、実際はそんなことをする必要はなく、区間I上のある値x_0についてWronskianが

0でないことをいえばいいだけだということを後編で証明していきたいと思います。

線形微分方程式と解空間について

線形微分方程式の解の集合を解空間といいますが、実はこの解空間は線形空間になっています。

今日はそれを確かめます。あまり厳密な議論はしません。

次のような線形微分方程式を考えます。

y^{(n)}+a_{n-1}y^{(n-1)}+\cdots+a_0y=0\cdots(1)

y^{(i)}yの第i次導関数を表します。y

さてy_1,y_2(1)の解であるとすると、

それらの線形結合c_1y_1+c_2y_2(1)の解になっています。

なぜなら、微分演算の線形性から

(c_1y_1+c_2y_2)^{(n)}+a_{n-1}(c_1y_1+c_2y_2)^{(n-1)}+\cdots+a_0(c_1y_1+c_2y_2)\\  \\  = c_1(y_1^{(n)}+y_1^{(n-1)}+\cdots+y_1)+c_2(y_2^{(n)}+y_2^{(n-1)}+\cdots+y_2)\\  \\  =c_10+c_20\\  \\  =0

ここではスカラー倍と和に関しての公理しか確認しませんが、他の線形空間であるための公理についても解空間はその条件を満たしていることが確かめられます。

詳しくは線形代数の教科書を参照してください。

線型空間ではその次元の数だけの線形独立なベクトルをとってくることができて、

線形空間の任意のベクトルはそれらの線形結合で表せるということが知られています。

線形空間上の元a_1,a_2,\cdots,a_kが線形独立であるとは

c_1a_1+c_2a_2+\cdots+c_ka_k=0\to c_1=c_2=\cdots=c_k=0

が成り立つことをいいます。

線形空間の次元とは、その空間上で線形独立なベクトルの組の最大数のことです。

(1)の解空間にこの線形空間の定理を適用すると、

解空間にはある線形独立な解の組が存在して、それらの線形結合によって

任意の元は表される!ということがいえます。

さてそれではそのような基底となる解の組はいったいいくつ必要なのでしょうか?

すなわち解空間の次元はいくつなのでしょうか?

実は n階線形微分方程式の解空間の次元はちょうどnになることが知られています。

その証明はまた後ほど。

チョコレートと数学の話

チョコレートの定義って、どういうものなんでしょうか?

天下のお菓子会社、江崎グリコさんのサイトの情報によると

日本の法律では次のように定められているようです。

「チョコレート」とはチョコレート生地だけか、チョコレート生地を全重量の60%以上使用した加工品のことです。チョコレート生地とはカカオ分が35%以上、或いはカカオ分が21%以上でそれを合わせた乳固形分が35%以上のものです。
「チョコレート菓子」とはチョコレート生地が全重量の60%未満で、ナッツやフルーツなど他の食材とを組合わせたチョコレート加工品のことです。
「準チョコレート」とは準チョコレート生地単独か、準チョコレート生地の比率が60%以上の加工品のことです。準チョコレート生地とはカカオ分が15%以上或いはカカオ分が7%以上でそれを合わせた乳固形分が12.5%以上のものとなっています。
「準チョコレート菓子」とは準チョコレート生地が全重量の60%未満で、ナッツや、ビスケットなど他の食材とを組合わせたチョコレート加工品のことです。
引用元: http://www.ezaki-glico.com/qa/products/candy/answer/a23.html

さて、上の定義こそがチョコレートの定義だ!と主張したいのではありません。

このような食品表示の定義は国によって様々ですし、さらに言えば最初はその

ような区別は特になくて、カカオを含むようなお菓子をなんでもかんでも

チョコレートと呼んでいたでしょう。時代が進むにつれて、チョコレートを

しっかりと分類する必要が出てきて、世の中にある様々なチョコレートの性質

を考慮して、上のような便宜上の定義が定まったのです。

さて、上の定義を「チョコレートの公理」と呼ぶことにしましょう。

公理という言葉は聞きなれない言葉かもしれませんが、これは数学の世界で

「議論の出発点としての仮定」のことを指します。

議論の出発点というけど、じゃあその公理の正当性はどこからくるのかと考え

る人がいるでしょう。

実はどのような公理たちを定めるかということは、それらを定めると今まで

考えてきたモノがうまく説明できたり、それらを認めることで面白いモノにつ

いて議論できたり、などという観点から決めるのです。

ちょうど「チョコレートの公理」と同じように、先人の様々な数学の議論がう

まく説明できたり、そこから発展して面白い議論をしたりするために、

便宜的に公理を定めます。

だから逆に言えば、どのような公理を定めてもよく、

公理から論理的に導かれたことがらは公理によってその正当性が保証されるのです。

僕が数学が厳密で、ある意味すごく自由な学問であると思うのにはこのような理由があります。

公理以外の仮定を議論に持ち込まなかったり、定めた公理の上で議論できる限りのことをやりつくそうとする行為はすごく自由な行為だと僕は思うんです。

行列式を微分しよう!

試みとして、ですます調で書いてみようと思います。書きにくかったら戻します。

行列式を微分すると、普通の関数の積の微分公式のような、きれいな公式が出てくるでしょうか?

実際にやってみましょう。

いまxで微分可能な関数のみを成分とするn\times n行列A=\{a_{ij}\}を考えます。

Aに対して行列式 |A|

\displaystyle\sum_{\sigma\in S}^{}sgn(n)a_{1\sigma (1)}a_{2\sigma (2)}\cdots a_{n\sigma (n)} \cdots (1)

と定義されます。

\sigma1,2,\cdots,nを並べ替えた順列を表していて、Sはそのような\sigma全体の集合です。

\sigma(i)\sigmai番目の要素を取り出す関数で、sgn(\sigma)\sigmaが偶置換なら1,奇置換なら-1となる関数です。

次の公式を後で使います。証明は帰納法でできます。

n個の積に関する微分の公式)
f_1,f_2,\cdots,f_nをxで微分可能な関数とするとき、f_ix微分を
f_i^{\prime}と表すことにすると

\frac{d}{dx}(f_1f_2\cdots f_n) =(f_1^{\prime}f_2\cdots f_n) +(f_1f_2^{\prime}\cdots f_n) +\cdots +(f_1f_2\cdots f_n^{\prime}) \cdots (2)

(2)の公式を使って、|A|を微分すると

\frac{d}{dx}|A|= \displaystyle\sum_{\sigma\in S}^{}sgn(n)a_{1\sigma (1)}^{\prime}a_{2\sigma (2)}\cdots a_{n\sigma (n)}\\ +\displaystyle\sum_{\sigma\in S}^{}sgn(n)a_{1\sigma (1)}a_{2\sigma (2)}^{\prime}\cdots a_{n\sigma (n)}\\ +\cdots\\ +\displaystyle\sum_{\sigma\in S}^{}sgn(n)a_{1\sigma (1)}a_{2\sigma (2)}\cdots a_{n\sigma (n)}^{\prime}\\

行列式の定義から、

各項 \displaystyle\sum_{\sigma\in S}^{}sgn(n)a_{1\sigma (1)}a_{2\sigma (2)}\cdots a_{i\sigma}^{\prime} \cdots a_{n\sigma (n)}

Aの 第i行の成分すべてをxで微分した行列の行列式になっています。

これより、次の公式が導けました。

(行列式の微分公式)

\frac{d}{dx}\begin{vmatrix} a_{11}&a_{12}&\cdots&a_{1n}\\  a_{21}&a_{22}&\cdots&a_{2n}\\  \vdots&\cdots&\vdots&\vdots\\ a_{n1}&a_{n2}&\cdots&a_{nn} \end{vmatrix}=  \begin{vmatrix} a_{11}^{\prime}&a_{12}^{\prime}&\cdots&a_{1n}^{\prime}\\  a_{21}&a_{22}&\cdots&a_{2n}\\  \vdots&\cdots&\vdots&\vdots\\ a_{n1}&a_{n2}&\cdots&a_{nn} \end{vmatrix}  +  \begin{vmatrix} a_{11}&a_{12}&\cdots&a_{1n}\\  a_{21}^{\prime}&a_{22}^{\prime}&\cdots&a_{2n}^{\prime}\\  \vdots&\cdots&\vdots&\vdots\\ a_{n1}&a_{n2}&\cdots&a_{nn} \end{vmatrix}  +\cdots  +  \begin{vmatrix} a_{11}&a_{12}&\cdots&a_{1n}\\  a_{21}&a_{22}&\cdots&a_{2n}\\  \vdots&\cdots&\vdots&\vdots\\ a_{n1}^{\prime}&a_{n2}^{\prime}&\cdots&a_{nn}^{\prime} \end{vmatrix}

実はこの公式はあとで証明したい事柄があって、そのために導いておきました。

その事柄についてはまとまり次第、書きたいと思います。

n階線形微分方程式を行列形式にして解くやり方。

この前友達にいろいろ聞いて、納得できたので書いてみます。 次のようなn階線形微分方程式を考えることにします。

\frac{d^{n}x}{dt^{n}}+a_{n-1}\frac{d^{n-1}x}{dt^{n-1}}+\cdots+a_0{x}=0\cdots (1)

ただし、a_i\in\mathbb{R}(i=1,2,\cdots,n)としておきます。

行列形式で考えるために、ここでn個の成分を持った次のようなベクトルを考えます。

{\bf x}=(\frac{d^{n-1}x}{dt^{n-1}},\cdots,\cdots,\frac{dx}{dt},x)^T\cdots (2)

Tは転置記号。 {\bf x}はn成分のベクトル。

(1)をつかい

いま、ベクトルに関する時間微分の演算子を\frac{d}{dt} と書くことにすると、

\frac{d}{dt}{\bf x}=A{\bf x}となる行列Aを次のように定めることができます。

A=\left(  \begin{array}{ccccccc}  0&1&0&\cdots&0&\cdots&0\\  0&0&1&\cdots&\cdots&\cdots&0\\  \vdots&\vdots&\vdots&\ddots&\vdots&\vdots&\vdots\\  \vdots&\vdots&\vdots&\vdots&\ddots&\vdots&\vdots\\  \vdots&\vdots&\vdots&\vdots&\vdots&\ddots&\vdots\\  0&\cdots&\cdots&\cdots&\cdots&0&1\\  -a_{n-1}&-a_{n-2}&\cdots&\cdots&\cdots&-a_1&-a_0\\  \end{array}  \right)

\frac{d}{dt}{\bf x}=A{\bf x}\cdots (5)

と書きかえることができます。

実はA=\{a_{ij}\} が相異なる固有値をn個持つとき、(5) の解は指数行列e^{tA} を用いて形式的に

{\bf x}={\bf c}e^{tA} \cdots (6)

と書けることが知られています。ただし{\bf c} は定ベクトルです。

e^{tA}の定義は

e^{tA}=\displaystyle\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(tA)^k}{k!}\cdots (7)

です。

(6)(5)の解になっていることを確かめておきましょう。

いま正則な行列U を用いて

\Lambda=U^{-1}AU=\left( \begin{array}{cccc} \lambda_{1} & & &0\\ & \lambda_{2} & & \\ & & \ddots & \\ 0 & & & \lambda_{n} \end{array} \right)\cdots (8)

と表されているとします。 ただし\lambda_1,\cdots,\lambda_nAの固有値で、全て相異なるとします。

このときA=U\Lambda U^{-1},A^k=U\Lambda^{k}U^{-1}であるから

e^{tA}=\displaystyle\sum_{k=0}^{\infty}U\frac{(t\Lambda)^k}{k!}U^{-1}\\ =U\left( \begin{array}{cccc} \displaystyle \sum_{k=0}^{\infty}\frac{(t\lambda_1)^k}{k!} & & &0\\ & \displaystyle \sum_{k=0}^{\infty}\frac{(t\lambda_2)^k}{k!}& & \\ & & \ddots & \\ 0 & & & \displaystyle \sum_{k=0}^{\infty}\frac{(t\lambda_n)^k}{k!} \end{array} \right)U^{-1}\\ \\ =U\left( \begin{array}{cccc} e^{\lambda_{1}t} & & &0\\ & e^{\lambda_{2}t} & & \\ & & \ddots & \\ 0 & & & e^{\lambda_{n}t} \end{array} \right)U^{-1}

よって

\frac{d}{dx}e^{tA}=U\left( \begin{array}{cccc} \lambda_{1}e^{\lambda_{1}t} & & &0\\ & \lambda_{2}e^{\lambda_{2}t} & & \\ & & \ddots & \\ 0 & & & \lambda_{n}e^{\lambda_{n}t} \end{array} \right)U^{-1}\\    =U\Lambda \left( \begin{array}{cccc} e^{\lambda_{1}t} & & &0\\ & e^{\lambda_{2}t} & & \\ & & \ddots & \\ 0 & & & e^{\lambda_{n}t} \end{array} \right)U^{-1}\\    =U\Lambda U^{-1}U \left( \begin{array}{cccc} e^{\lambda_{1}t} & & &0\\ & e^{\lambda_{2}t} & & \\ & & \ddots & \\ 0 & & & e^{\lambda_{n}t} \end{array} \right)U^{-1}\\    =Ae^{tA}

よって、(6) (5) の解になっていることが確かめられました。

つまり上のようにn個の相異なる固有値を持つ場合には、n階線型微分方程式は行列の固有値を求めることに帰着させることができます。