僕は風景画が好きです。
理由は二つあります。
ひとつは風景画を見ることによって、ここからは遠くてとてもいけないような世界の光景を間接的に見ることができるからです。
世界中のいろいろな人達が描いた絵を集めたような画集はとても好きです。
しかし、もし世界中の風景が見たいなら、写真のほうがより正確に見ることができるし、
インターネットで検索すれば、世界中の名所の動画を見ることができるじゃないかという人がいるかもしれません。
確かにそうです。僕は風景の写真や動画を見るのも同じく好きです。
ただ、風景画が好きなのにはもう一つの理由があります。
それは風景画にはその絵を描いた人の視点から見た風景というものが直に反映されるからです。
風景の解釈といってもいいかもしれません。
空の色一つとっても、どのような青で描くか、そもそも青を使うのかなど人によって様々です。
なじみのある地域の風景画や、自分の行ったことがある場所の風景画などをみるとこれがとてもよくわかります。
同じ世界に生きて、同じ風景をみていたはずなのに描く世界はこうも違い、その場所の色はその人にはこのように見えているのか
と、あるいはこのように描こうとしたのかということを感じることができてとても面白いです。
では逆に、誰かの描いた風景画をみて、その場所に実際に行ってみるという行為はどうでしょうか?
例えば、聖地めぐりという活動があります。
アニメ・映画・ドラマ・小説など、その作品の舞台となった地を訪れる活動のことです。
その作品の舞台、背景となった場所へ行くことは、その作品をより深く楽しむという意味だけでなく、
人によるものの見え方の違い、解釈の違いを浮き彫りにしてくれるでしょう。
元となった風景をみて、作者が加えた加工やデフォルメに気づくでしょう。
また、それと同時に作者がその風景を見て、なにを描こうとしたか、作品と実際の風景はどこが共通しているのか
ということを考えることができるでしょう。
そのように、現実を下敷きにして作り出した作品がリアリティを持つのではないかと、僕は考えています。
どこかで現実とつながっているけれども、やはり現実そのもを映し出しているわけではない。
風景画はそこが面白く、素晴らしいと思います。